霞村四丁目の郵便屋さん
なにがどう伝わったのかはわからなかったけど、みやびに遥のことをあれこれ話すつもりはない。
だからこれでいい。

窓の外に視線を送れば、もくもくと空にかかっていた灰色の雲が少しずつ風に吹かれて去り、薄いブルーの空が顔を出し始めた。

山に向かうにつれ天気が悪くなることが多いのに、今日は違った。


「やんできたね」


みやびはそう言いながら、窓側の席に移動して空を見上げている。
そんなことをしたところでたいして景色が変わるわけじゃないのに。


「そうだね」


それでも俺も同じように反対側の席に移動して窓から空を見上げた。

なんとなくそうしたい気分だった。
なんとなく、だ。

それから二十分ほどして、霞村の隣町にあるスーパーの前のバス停に停車した。

敬老パスを見せて乗り込んできたのは、竹林に住むおしゃべりなばあちゃんだ。


「あれ、田之上さんとこの瑛太くんじゃないか」

「はい、こんにちは」
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