霞村四丁目の郵便屋さん
するとみやびは、俺の家とは反対方向に足を進めたかと思うと、でこぼこの舗装されていない田舎道からスッと森の中に入っていった……ように見えた。

入っていったと断言できないのは、そんなところに入っていく人が普通はいないので、錯覚かもしれないと思ったからだ。


雨が降ったばかりの森の中なんて、誰も入りたがらない。
落ち葉で足元はつるつるだし、入ったところでなにかあるわけじゃない。

竹林ならたけのこにでも出会えるかもしれないけれど、そもそも今は時期じゃない。


「みやび?」


思わずみやびの名前を呼び、彼女が消えた場所に行ってみたものの、ただヒノキやブナが生い茂るだけでなにもなかった。


もうずっと昔からあるこの森は、太陽の光を浴びなくても育つ陰樹ばかりだ。
どうやらそれが森林の最終段階らしく、いうなれば"出来上がった"森。

この森に歴史があることを物語っている。
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