霞村四丁目の郵便屋さん
「瑛太、おかえり」

「うん」


ガラガラと玄関の引き戸を開けると、すぐに母さんの声がする。


築五十年ほどする純和風のこの家は、林業をしていたじいちゃんが建てたものだ。

量産された家ではなく、村の大工総出で作ったというこの家は、柱の色こそ飴色に変わってきてはいるものの、古ぼけたという雰囲気はまるでない。

父さんと母さんは大学を卒業してから働いていた都会で出会い、ばあちゃんが亡くなったときにじいちゃんひとりでは寂しいからと、戻ってきたらしい。
それでも父さんは林業を継ぐことはなく、車で一時間以上かかる会社に勤めている。

広めの玄関に足を踏み入れスニーカーのかかとを踏みながら脱いだあと、いつもはすぐに二階の自分の部屋に行くのに、居間に顔を出した。


「あら?」


それが余程珍しいのか、洗濯物をたたんでいた母さんが声を上げる。


「おこづかいでもなくなったの?」

「ううん、違う」


だいたい、使えるような娯楽がないんだから、簡単にはなくならない。
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