君が残してくれたもの
目を閉じて、記憶を辿ろうとしていた。

「なずなちゃん?」

呼ばれて振り返ると、久保川くんが立っていた。


「久保川くん」

フラッとよろめいた私を見て、久保川くんは慌てて私に駆け寄った。


「大丈夫?」

久保川くんに支えられて、なんとか倒れずに済んだけど。

でもね。


ちょっと二の腕掴んでるし…

腰!腰触ってる!

頭の中はパニックなのに、ふらつく体では動けず。


「こ、これ、これだと思う...」


焦りと緊張で人差し指で激しく指さす。

久保川くんは机の上に視線を落とすと、

「なずな?」

静かな声で、読んだ。


「え?」


読めるはずない、なんて失礼なことを思っていた私はちょっと驚いた。


「よく読めたね。この漢字、難しいから」


海晴くんを見ながら、姿勢を正した。

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