君が残してくれたもの
5組の隣が空き教室となっている。

廊下に自分の足音が響く。

誰もいない廊下は、とてもヒンヤリと感じる。


しかし、こんな探し物をしてみると学校が広いことを再認識する。


こんなにたくさん部屋があるし…思い当たるところは探したけれど、見つからない。
空き教室にもなかったらどうしよう。


空き教室に入ると、静まり返った冷たい空気に包まれた。

軽いめまいに襲われた。

心拍数が上がって息が苦しい。

一体何?怪奇現象?

ふらつきながら、しがみついた机をかすむ視界の中、目を凝らして見ると...


「これ...何?」


油性ペンで書かれた落書き。


薺...なずなだ。


「漢字だと難しいから、ひらがなにしたって...親がね」


「なずなにはひらがなの方が合ってる」


頭の中で蘇る会話。

誰の声だろう。


思い出しそうで思い出せない。
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