イジワル御曹司の執着愛~愛されすぎて逃げられません!~
とはいえ、ただの幼馴染と遠子が本気で思っているわけではなく、やはりどこか後ろめたい。
「きゃーっ、よかったぁっ!」
さらに、まるで女子高生のように彼女ははしゃぐ姿を見て、胸がチクッといたくなる。
それは目の前の見知らぬ彼女に嘘をついたことなのか、それとも自分の気持ちに嘘をついたことなのか、わからずに――。
彼女は「いきなり声をかけてごめんなさい」と言い、遠子よりも先にトイレを出て行った。
「はぁ……」
遠子もため息をついて、トイレを出る。
すると彼女は、なんと直倫の座る椅子の後ろに立って、彼に話しかけている。
話しかけられた直倫も、上品な笑顔を浮かべて彼女を見上げていた。
(あんな顔するんだ……)
遠子の前では意地悪だったりからかってニヤニヤしたりとそういう顔ばかりなのだが、こうやって離れた場所から見ると純然たる御曹司だ。
席に戻ることができずに立ち尽くしていると、
「――トーコ」
直倫が遠子に気が付いて、軽く手をあげた。
「あ……お友達さん、戻ってきたんですね。じゃあ私、これで。また」
彼女はにっこりと笑うと、そのまま店を出て行った。