イジワル御曹司の執着愛~愛されすぎて逃げられません!~
だから遠子はあくまでも株主のひとりで、経営にはまったくかかわっていないし、今後かかわる予定もない。
なので、ふたりの結婚が昔から決まっていたという直倫の言葉はとても信じられなかった。
それにそんなことを知っていたのだとしたら、直倫の態度が余計わからない。
遠子には意地悪だったかもしれないが、物心ついてからずっとモテモテで相手に不自由しなかった直倫が、自分と結婚していいなんて思うはずがない。その気になれば、選び放題なのだから。
自分には、異性に好きになってもらえるような取柄はなにもないのだ。
(地味だし……勉強だけだし……今は無職だし……)
直倫は、うつむいた遠子に顔を寄せる。
「トーコ。顔を上げろ」
直倫の言葉に遠子はゆっくりと顔を上げる。
正直言って、どうしたら正しいのか全くわからなくなっていた。
「トーコ」
直倫が優しく名前を呼び、指が頬の上をすべる。
「心配するな。すぐに俺と結婚したくなるよう、毎日可愛がってやる」
そして誰でも見とれてしまうような華やかな笑顔で、笑ったのだった。
(謎の自信……嘘だ……嘘だと言ってくれ……)
遠子は呆然と、悪魔な幼馴染の微笑みを見つめ、そしてベッドの下でしっかりと伏せをしているウニを見て、深いため息をついたのだった。