イジワル御曹司の執着愛~愛されすぎて逃げられません!~
「誰であっても直倫に関係ない」
そうぴしゃりと言い放ち、頬に残る涙を拭いて直倫のほうを振り返った。
すると――不意打ちでパンチでも受けたような顔をした直倫と目が合った。
それはまるで傷ついたとでもいわんばかりの表情で、遠子は一瞬息をのむ。
(え……?)
だがすぐにその表情は消えて、直倫はいつもの自信に満ちた美しい顔になった。
「お前が誰を好きだろうと、俺はお前と結婚するし、全部を俺のものにする」
「なんで……?」
好きな人がいると言っているのに、なぜあきらめないのだ。意味が分からない。
「それはもう、大昔からそうなるように決まっているからだ」
直倫は堂々と宣言した。
それは、両親が自分の意向を無視して、遠子と直倫を結婚させると決めていたということだろうか。
そして直倫もそれを受け入れているということか。
確かに久我山家には子供はひとり、自分だけだ。
だが和美は昔から、遠子に跡を継ぐ必要はないと言っている。
おそらく社内に、すでに目星をつけている後継者候補ががいるのだろう。