イジワル御曹司の執着愛~愛されすぎて逃げられません!~
だが仕方ない。背に腹は代えられぬ。
それから約束の時間に間に合うようにメイクをし、困ったときのワンピースという法則でレモンイエローのワンピースに着替えた。
髪はとりあえずゆるく編んで、シュシュでまとめる。
最近まで髪型なんかずっとどうでもいいと思っていたが、さすがに長すぎて外出するとなるともてあましてしまう。
「パパ、出かけてくる」
リビングで本を読んでいた和美に声を掛けると、父はハッとしたように顔をあげた。
「どうしたの、遠子!」
遠子のワンピース姿に驚いたようだ。目がまん丸になっている。
「ちょっと……ね。夕ご飯までには戻るから」
「わかったわかった。どこに行くの、送ってあげようか?」
「ううん、いい。あと、いつでもいいから髪切ってくれる?」
「えーっ、それはいいけど切っちゃうの? スーパーロングでそこまできれいな髪ってほんとなかなかないよ。もったいなくない?」
「もったいなくないよー。外に出るときどうしようってもてあますし……じゃあ行ってきます」
遠子は早口でそう答えると、「やっぱりいい影響でてるんじゃない?」と、ニコニコと笑って玄関まで見送る父に手を振って、家を出た。
(もう……そんなんじゃないのに)
家を出るのは直倫と仲良くやるためではなく、きれいに別れるーーというか、結婚話をなかったことにするためなのだから。