僕に、恋してみたら?


「1つだけ、聞いていいかな」

「……なに?」

「水上先輩のどこに惚れたのか、結構俺の中で疑問なんだ」

「え……そうなの?」

「これは、茉帆が好きになるタイプに見えないっていう、単なる俺の勝手なイメージなんだけど。どうしてもそこがわからなくて」

「それは……」


水上先輩に会って話した回数なんて、しれている。

学年が違えば、共通の知人はお姉ちゃんがいるが――先輩とわたしの関係に否定的で。

接点なんて、ほとんどない。


それでも、水上先輩との僅かな思い出は、心の中にいつまでもある。

記憶のメモリーの、1番引き出しやすい場所に、先輩との思い出が大切に保護してしまわれている感じとでもいおうか。

それはきっと、いつでも思い出せるように、必然的にそうなっている。


先輩の笑顔も。

イジワルなところも。

なつっこいところも。

素敵な声も――すべて覚えている。

まるで昨日のことのように。


突然教室にやって来た先輩に手を引かれ、屋上まで連れて行かれた――あのときの先輩の手のぬくもり。

一緒にお弁当を食べた、昼休みのこと。

体育館から出て、すれ違い際に声をかけて手を振ってくれたことでさえも。

事細かに覚えている。


先輩と一緒だと、退屈だった日常が、途端に輝きだした。

かけがえのないものになった。

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