僕に、恋してみたら?


あぁ。

見とれているうちに、先輩が通り過ぎてしまう。

先輩は友達と話すのに夢中なのか、なかなかこっちを向かない。


……行っちゃった。

挨拶、できなかった。


「ねぇ、茉帆って水上先輩と知り合いじゃなかった?」
ユカリがそういったとき。

「……茉帆ちゃん?」


――!


振り返ると、水上先輩も、こっちを振り返っていた。

信じられない。

気づいてもらえた。


「先輩……」

「体育だったの?」

わたしの体操着袋を見てそうたずねてくる。

「え、あ……はいっ」

「お疲れ」

「お、お疲れ様です!」

「またね」
ニッコリ微笑むと、先輩は友達と行ってしまった。


心臓が――破裂しそうだ。


ただ、すれ違い際に、軽く挨拶しただけ。

それだけなのに、こんなにも嬉しい。

話せたことが。

気づいて声をかけてくれたことが。

先輩の……笑顔をみれたことが、たまらなく嬉しい。

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