お前のこと、誰にも渡さないって決めた。


だから、遠ざけようと思った。


近くにいたって、あいつにはきっと優しくできない。
むしろ、傷つけるだけで。


あいつを遠ざけるために、彼女をつくった。



『棚橋くんのこと、好き……になっちゃった』


『いいよ、俺の彼女になる?』



丁度いいタイミングで告白してきた藤宮を俺は拒まなかった。




『俺、彼女できたから』




やっと、縁が切れると思った。

苛立つこともなくなるだろうと。



『みっくんの彼女になりたい!』



なのに、あいつ、変なところで粘り強いし。

“彼女” なんて意味もわかってないくせに。


そんなあいつに俺の苛立ちだって増す一方で。



早く離れたくて、諦めてほしくて、
告白してくるあいつ以外の女子は誰一人拒まなかった。



………いわゆる、来るもの拒まずってヤツ。




自分でも最低だってわかってるんだ。



だけど。




それ以上に、もうあいつに振り回されるのはごめんだった。



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