お前のこと、誰にも渡さないって決めた。
*


人気の少ない、階段の踊り場。

俺がそこに着いたとき、相手は既にそこで待っていた。



「ごめん、待たせた?」



いろんな意味を込めて、“ごめん” と前置いて、相手とちゃんと向き合った。




ショートボブで、
大人しそうな料理部の女子。




俺が、見境なく告白を受け入れて、
付き合ってきた女子のうちのひとりだ。






「ううん、そんなに待ってないよ!っていうか、光希くんから呼び出すなんて珍しいね?」



嬉しそうに首を傾げる様子に、
俺は罪悪感が湧く。



罪悪感が湧くけれど、もう、引き返せない。





「あのさ、話があるんだ」




真剣なトーンの俺の声に、相手はビクリ、と肩を揺らした。






「………ごめん、もう、終わりにしたい」



「…え…」



「別れてほしい」





告げたのは、残酷な別れの言葉。

きっと、その相手を傷つけると分かっていても、俺が前に進むために必要だから。




ただの自分勝手な宣言で。




「っな、なんで!?」




涙を目に溜めて、声を荒らげたその子に、俺にはもう、かけてあげられる優しい言葉は残っていない。




「なんで、いきなりそんなことっ……!!光希くん、彼女なんていっぱいいるんでしょ!?」




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