お前のこと、誰にも渡さないって決めた。
こうやって声を荒らげられる度に、
涙を見るたびに、
俺って本当に何もわかってなかったんだってことに気付かされて。
「ごめん。……みんな、ぜんぶ、終わりにしたいと思ってる」
「………私、たったひとりの彼女になれなくても、それでも、」
ほろりと涙の粒が落ちて、
「光希くんのこと、好きだったのに」
何度目だろう。
ひまりへの想いを自覚してから、俺は、けじめを付けるために中途半端に付き合ってきた数々の女子との関係を終わらせているところだ。
その度に、涙を見るのも、もう何度目かわからない。
利樹の言う、“女泣かせ” はまさにその通りで。図星すぎてなにも言い返せない。
「ごめん、」
「理由……教えてくれなきゃ、わからないよ」
今まで、知らなかった。
告白されて、満更でもなくて、断る理由が見つからなかったから誰とでも同じように付き合ってきた。
だけど、違ったんだって。
彼女たちが伝えてきた “好き” は俺が思っていたよりも、ずっと大きくて重たい気持ちで、
俺はずっと気づかないままに蔑(ナイガシ)ろにしてきた。
ひまりのことが好きだと気づいて初めて知った。
人を “好き” になる気持ちは、
こんなに重くて大きいものだったんだと。
「………好きな人がいる」
はっきりと、俺の口が紡いだ言葉。