お前のこと、誰にも渡さないって決めた。


「今日は大人しくしようと思っていたけど」


はぁ、とみっくんがため息をつく。



「家にいてもおまえのことが頭から離れなくて」


「え……」



「居てもたってもいられなくなって、家飛び出してきた」




な、何言ってるの、みっくん………


私、耳がおかしくなったのかな。

いつものみっくんからは想像もつかない、甘すぎる言葉の数々にくらくらする。




「ひまりには悪いけど」



だめだ、身体中が沸騰しそうに熱いし、



「俺、ひまりのこと誰にも渡す気ねーから」




ぼーっとするし、

聞こえてくるみっくんの声は際限なく甘いし。




これ……夢なのかな。





「おい、ひまり……?どうした?」





私を覗き込むみっくんの心配そうな顔。



やっぱり私、好きだよ。
……みっくんのことが大好き。



ぼんやりする頭でそんなことを考える。




それから、訪れたのはふわふわして身体が浮くような感覚。


やっぱり、これは、夢……なんだよね。




だって、みっくんの姿がぼやけて、白んでいく。



最後にぐらりと足元が揺れて、




「ひまりっ!!」





切羽詰まったようなみっくんの声と、
それから誰かに抱きとめられた感触と共に、



私の意識は完全に途絶えた。




< 340 / 387 >

この作品をシェア

pagetop