あまりさんののっぴきならない事情
 




 あのあと、近くのビルに配達に行っていた成田は、帰ってから、あまりが海里の会社に行くことになった話を聞かされた。

「なんで僕の居ない間にっ」
と言うと、

「あれっ? まずい?」
と自分とは似ていない丸顔の叔父は笑って言ってくる。

「あまりがそんなとこ行ってなにすんだよ」
とテラス席の女性客に苺のワッフルを運んでいるあまりを見ながら叔父に噛みつくと、

「えーとね。
 珈琲淹れたり、お茶淹れたり」
と言ってくる。

 は? と訊き返した。

 まあ、秘書もそういうことはするだろうが。

 なんだか、それだけ、な雰囲気なのだが、と思っていると、
「うちの商品売ってくれたりー」
と叔父は陽気に笑い出す。

 なんなんだ? と思っていると、
「明日から、あまりちゃん、四時間くらい此処抜けるから、頑張ってね、克也」
 はい、と出来上がった珈琲をふたつ、トレーに入れて渡された。




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