あまりさんののっぴきならない事情

 



「えーっ。
 なんなんですかっ、それっ。

 ずるいですーっ、あまりさんっ」

 あまりが海里の会社に行くことになったと聞かされた沙耶が騒ぎ出した。

 あまりは、はは……と力なく笑い、
「……替わろうか?」
と言ってみた。

 どうも秘書と言っても、要するに、秘書室でお茶を淹れて欲しい、というだけのことのようなのだが。

「最近の女子社員はお茶汲み、嫌がるからな。
 俺はそれはそれで立派な仕事のひとつだと思うんだが」
と海里は言っていた。

「ま、それだけをやらせてたら問題だがな」
と言う海里に、いや、貴方今、私にそれだけをやらせようとしてますよね? と思う。

 まあ、私は別に嫌ではないし、社員じゃないから関係ないけど、と思っていると、海里は突然語り出した。

「うちの父親、結構厳しくてな」

 写真で見る限り、気のいいおっちゃん風な感じでしたが、と、もうかなり出来上がった状態の同窓会の写真を見ていたあまりは思う。
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