あまりさんののっぴきならない事情
「おい、成田。
 あの男、見たことあるか?」
と小声で訊くと、成田はさっきの男を見ながら、

「ああ。
 そういえば、最近、よく見るね」
と言ってきた。

「今まで特に注意して見てはなかったんだけど」
と言ったあとで、チラとあまりを見、

「今度から気をつけとくよ」
と言う。

 そのまま、
「成田さーん」
と言う女性客たちの声に呼ばれて、言ってしまった。

「……この店は指名制ありなのか」

 此処は何屋だ、とそれを見ながら呟くと、

「でもまあ、成田さんが売り上げ伸ばしてくれてますからね。
 いいですよね、爽やかで格好いい店員さんが居るカフェで朝食。

 今日も一日頑張ろうって気になりますよねっ」

 深い考えがあるのかないのか、あまりは笑顔で成田たちの方を見ながら言ってくる。

 そろそろ時間だ。

 なんなんだ、お前は、と思いながらも、仕方なく立ち上がろうとすると、
「あっ。
 なんで帰るんですかっ」
とあまりが振り向き、言ってくる。
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