あまりさんののっぴきならない事情
 



「あら、海里。
 いらっしゃい」

 ブティックの扉を開けると、大崎が自分を見、
「ちょうどよかったわ。
 今からお昼買いに出るんだけど、今日はひとりだから、あんた留守番しててよ」
と言ってくる。

「……ふざけてんのか? 大崎」
と言うと、

「いやあね、冗談よ、支社長様。
 っていうか、なにしに来たのよ、昼休みにわざわざ。

 私の顔を見に来たのかしら?」
と言う。

 嫌な顔をすると、
「だから、冗談よ」
と言ってきた。

 どうしたの? と問われ、いや……と呟いたまま、黙っていると、
「この間のあまりちゃん?」
と言ってくる。

 よくわかったな、と顔を上げると、
「あれはあれで扱いにくそうな子よねえ」
としみじみと言っていた。

「あんたはあんたで、女の扱いに長けてないしね。
 今度また連れてきなさいよ」

 どんな感じか、少し話してみてあげるわよ、と言ってくれる。

「麻里子(まりこ)よりは私の方が女性の心理に詳しいわよ」
と言われ、……まあ、そうかもな、と思っていた。



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