あまりさんののっぴきならない事情





 パンの販売が終わったあと、特にお茶を煎れる仕事もなかったので、あまりは、秋月の仕事を手伝っていた。

 書き込みの通りに、前年度の文章を打ち直しながら、時折、溜息をついていると、秋月が、

「いやあね、どうしたの。
 珍しいじゃない。

 なんか悩みでもあるの?」
と言ってくる。

 すると、桜田が、ふふふふ、と笑って言ってきた。

「支社長のことですか?」

 あまりとは対照的に陽気だ。

「一緒に出張してどうでした?」
と訊いてくるが、もしかしたら、寺坂さん経由で少しは聞いているのかもなと思った。

 ……情報漏洩ですよ。

 曇りなく笑う桜田がちょっとうらやましく、いじけてしまう。

「なによ。
 あんた、あまりにかこつけて、自分のことしゃべりたいだけでしょ」
とからかうように秋月が言っていた。

 そんなことないです、と照れる桜田はいつもより遥かに可愛い。
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