あまりさんののっぴきならない事情
 美人だが、こう、色のない感じ、というか、静かなモノトーン系の美女といった感じの桜田だが、今日はその名の通り、ぱっと花が咲いたように鮮やかな印象だ。

 へえー。
 人間って、両想いになったってだけで、こんな感じになるのかー、としみじみと眺めてしまった。

「だって、あまりさんたちのおかげですし。

 そうだ。
 あまりさんたちも行かれたんでしょう?」
と桜田が訊いてきたので、どきりとしてしまった。

 りょ、旅行に?
 っていうか、宿に? と思って、挙動不審になってしまったのだが、違った。

「出張ついでにお食事とか」

 ああ、お食事ね……、なるほど。

「私、初めて寺坂さんと二人でお食事したんです」
と桜田は嬉しそうに言う。

 可愛いなあ、この人。

 自分より年上のはずなのだが、今の自分よりは遥かに純粋そうに見えた。

 ……もう私は汚れてしまいましたからね、といじけて思う。

「なによ。
 食事だけして帰っただけなの?」
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