あまりさんののっぴきならない事情
 秋月が、
「鳳凰の飾り切りが前菜で出て来たり」
と言って、桜田に、

「それ、秋月さんがお正月に行った高い宿の料理じゃないですか」
と笑われていた。

 や、宿の料理でしたが、鳳凰は出ませんでしたね、と思う。

 出来るだけ、話を長引かせないように、忙しげにカシャカシャとキーを叩いていると、一瞬沈黙した秋月が、
「……怪しい」
と言ってきた。

 思わず、手が止まりそうになる。

「あんた、いつも訳のわからないことを言い出すのに、今日はまともなことしか言ってないじゃない」

 いや……普段から、まともなことしか言ってないつもりなんですが。

 秋月は席から立たないまま、こちらに向かい、身を乗り出してきた。

「なにか警戒してしゃべってるからそんな感じなんじゃないの?」

 うっ。
 さすが秋月さん、と思いながらも、押し黙る。

「なによ。
 黙秘権?

 さては、二泊三日もあったから、支社長とラブラブ旅行にでも行ってきたわねっ」
と言われてしまう。

「い、行ってませんっ。
 二泊三日もなんてっ」

「じゃあ、何泊行ってきたのよっ」
と秋月に責め立てられていると、

「あー、秋月さん」
と声がした。
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