あまりさんののっぴきならない事情
 あまりは目を閉じ、スープの匂いを堪能しているようだった。

「あー、幸せです。
 こんなとき、本当に此処に勤めさせてもらってよかったなって思います」

 目を閉じたまま、本当に幸せそうにあまりは笑う。

 その顔を見ていると、自分まで、穏やかな気持ちになる気がした。

 ……どうしよう。
 キスしたい。

 今日は、こんなとき、ひょっと邪魔しに現れる沙耶も休みだし。

 でも、いきなりそんなことしたら、嫌われるだろうな。

 そういえば、海里がめちゃくちゃ警戒されていたが、あいつ、あまりになにかしたに違いない、と忙しいのに、わざわざ早朝から訪ねてきた海里を思い出す。

 いいだろうか、軽くなら。

 あまりに言ったら、軽くも重くも違いませんっと言われるところだろうが。

 ちょっとだけ……






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