あまりさんののっぴきならない事情
 さすが社長、巧みに自分の理論を押し付けようとしてきますっ。

「つまり、俺のことを好きじゃないと言うのなら、お前はふしだらな女、という結論になるが。
 いいのか?」

 こっ、この人、私を洗脳しようとしていますよーっと海里の両肩に手をやり、押し返そうとするが、そのがっしりとした身体は動かない。

「逃げるな。

 観念しろ、あまりっ。
 今日はカメは助けに来ないっ!」

 いや、前回もカメ、助けには来てないですけどね……、と思っている間に、海里の骨太な長い指で、あまりは顔の位置を固定されてしまう。

 すぐ目の前に海里の顔があった。

 なんとか視線をそらそうと、せめて目だけを他所に向けてみた。

 が――。

「無駄な抵抗はやめろ」
と言われる。

 貴方が警察ですか、と目をそらしたまま思っていると、海里は口調を変えて、やさしく言ってきた。

「……大丈夫だ。
 一生大切にしてやるから」

 さっきまでの少しふざけた調子とは違い、その言葉からは、なにか覚悟のようなものを感じた。
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