あまりさんののっぴきならない事情
 あまりは海里を見つめ、そっと訊く。

「……そんなこと言って、浮気したりしませんか?」

 しない、と言う海里に、
「でも、おねえさん、なさったんでしょう?」
と言うと、

「姉がしたから俺もするとかあるか」

 待て、今から、麻里子に電話してやる、と起き上がり、スマホをつかもうとするので、いやいや、今、向こうは何時なんですか、と止めてみた。

 よく考えたら、あっちが昼間だったのだが。

「愛してる、あまり。
 永遠にお前だけが好きだ」

 そう言ったあとで、海里は、

「……大丈夫か?
 日本語は通じるか?

 フランス語で言ってみようか?」
とからかうように言ってくる。

「や、やめてください……」

 だから、フランス語は活用しかわからないんですってば。

 ぬざぼ~ん ぶざべー

 いるぼーん、えるぼーん
と心の中で怪しい活用を言っている間に、海里は、

「そうか」
と笑って口づけてきた。

 そんな海里の顔を見ながら、あ、こういう顔は可愛くて好きだな、と思う。

 海里の指が自分の指にそっと絡んできたとき、もう……なんで抵抗してるのかわからなくなってきたな、と思っていた。

 




< 291 / 399 >

この作品をシェア

pagetop