あまりさんののっぴきならない事情
「な、なにもありませんけどっ?」
とあまりは壊れたオモチャのように。おかしな音階のまま繰り返していた。

 腕をつかんだまま、しばし、考える。

「あまりは別に海里が将来偉い人になりそうだから好きになるとかないだろうけど」
とつい言うと、

「えっ。
 それで好きなんじゃないですよっ」
と思いもかけないことを言われたように、あまりは叫ぶ。

 そして、言っておいて、更に慌てふためいた。

「っていうか、好きだとかっ。
 そんなことないですしっ!」

 本当にわかりやすい……といっそ笑ってしまう。

 そうか。
 やっぱり、海里がいいか、と思いながら手を放した。

「いや、なんでもないよ」
と言って、椅子に座ると、あまりは今度は逃げずに自分を見下ろしてきた。

「なにかありました?」
と今度はあまりが訊いてくる。

 成田は手にしかけた雑誌を置いて、あまりを見上げた。

「いや、大学を卒業してさ。
 まあ、いろんな道があったと思うんだけど。

 なんとなく、その先が見つけられなくて、ぼんやり日本に帰ってきたら、叔父がさ、見兼ねて、うちで働かないかって」
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