あまりさんののっぴきならない事情
「へー、企業専門のこそ泥ね」
じゃあ、うちには入らないか、と成田は呟く。
今日は人手が足りているということで、成田がパンや総菜の販売に付き合ってくれた。
「しかし、此処、近いだけあって、うちのお客さん多いね」
接客の合間に成田がそんなことを言ってくる。
「そうみたいですねー。
総務の金子さんとか。
営業の三田さんとか。
ああ、あの人とか」
とあまりが指差す。
スーツの男が離れた位置でこちらを見、立ち止まっていた。
「ああ、そういえば、たまに来るな……。
あまり」
はい? と見ると、成田が、
「あの男、服部さんのメモにあった男と似てないか?」
と言う。
「そうですか?」
「これといって特徴のない顔で中肉中背。
印象に残りにくいが、唯一の特徴としては、額の真ん中にホクロがある……」
額の真ん中にホクロか。
「なんか、ありがたい感じですね。
……ありますかね? ホクロ」
思わず、二人で、じーっと見てしまい、それに気づいた男はぺこりと頭を下げ、何処かに行ってしまった。