あまりさんののっぴきならない事情
 自分の罪を認めるようなことを言う男に驚いたが、顔には出さなかった。

「此処で捕まるのは嫌かなと思って」
とカフェを見ながら男は言う。

「なんでわかったんですか?」

 そうあまりは訊いた。

 既に、服部たちが包囲していて、一般の客は店から出されつつあった。

 逃げられないとわかっているので、男もあまりも逆にゆったり話ができた。

「あのウェイター、刑事だろう」
と男はこちらを見ている男の店員を指差す。

「そうですけど」
と言うと、

「いや、この間から警察に目をつけられてるのはわかっていたんだが」
と男は言う。

「此処の店員は、みんなおっとりしているというか。
 感じがいいからな。

 あんな目の鋭い店員は此処の店長は雇わないと思ったんだ」

「さすがですね」
というあまりに、心配でか、いつの間にか側に来ていた海里が、

「なに感心してんだ」
と言う。

 特に海里も男を捕まえる気はないせいか。

 海里が来ても、男は逃げなかった。
< 342 / 399 >

この作品をシェア

pagetop