あまりさんののっぴきならない事情
 



「今日はどうもありがとうございました」

 鍵を開け、幾つか荷物を中に入れたあまりは海里に頭を下げた。

 いいのだろうかな、こんなに買ってもらって、と思いながら、戸惑いがちに、

「あの、どうしてこんなによくしてくださるんですか?」
と訊くと、海里は、

「別によくしているつもりはない」
と言う。

「うちの会社に似合わない、チャラチャラした服を着てこられたら、風紀が乱れると思ったから、買い与えただけだ。

 明日からちゃんと来いよ。

 ……この俺を振った報復、たっぷりとしてやるからな」

 ひい……。

 どさりと手にしていた紙袋が落ちる。

 じゃあ、と言って海里は去っていってしまった。

 今夜は悪い夢を見そうな気がする……。





< 43 / 399 >

この作品をシェア

pagetop