午前0時、魔法が解けるまで。






「その時のこと、詳しく教えてくれる?」


「でも、優衣……」

「大丈夫だから」



母の目を真っ直ぐに見てそう言えば、彼女はハンカチで口元を押さえて何か考え込んだあと、目を見てそらさない私に折れたのかゆっくりとハンカチを持つ手を下ろした。



「優衣の小学生の頃、すごく仲良くしていた男の子がいたでしょう。……どんな子だったか、ちょっと思い出せないけど。その子が目撃していて、大人を呼んでくれてね。すぐに救急車を呼んで処置出来たから、命に別状はなかったんだけど」



"かおるくん"


記憶の中の私の幼い声が男の子を確かにそう呼んでいた。そして記憶の中の幼い顔が、大人になった顔と合致する。







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