午前0時、魔法が解けるまで。
「何かあったのか。いつも以上にボケっとしてたぞ」
逢坂くんが缶を開けるとカシュッと爽快な音がした。それにならうように私もペットボトルのキャップをひねってお茶を飲む。
「……あの、増田勇気って人、知ってます?」
薫くん以上ではないが、増田先輩は大学の一部ではそこそこ知名度のある学生だ。
それでも知らない人がほとんどだろうからダメ元で聞いたのだけど、予想に反して逢坂くんは面食らったように口を開けて私を見た。