午前0時、魔法が解けるまで。
「……ストーカー?」
昼間の私の態度が気に食わなくてここまでやってきたのだろうか。
「ああ、違うよ。忘れ物を届けにね」
そう言いながら片手で母を支えたままコートのポケットを空いた手で探る。
「午後から撮影があったんだけど、スケジュールが押してしまって。こんな時間になってごめんね」
そう言って差し出された確かに私が今日持ち歩いていたハンカチと、カフェオレを買おうとして取り落としたままだったお金だった。