二頭(二人の男)追うもの…バチが当たる

消防隊の決死の努力のお陰で、アパートと裏の大家さんの家は全焼したものの、負傷する人も無く消し止められた。明日にも火事の原因調査が行われるらしいが、出火元であるアパート1階住人の寝タバコが原因だろうと、大家さんが教えてくれた。

寝タバコが原因だなんて、今回は亡くなる人が出なかったから良かったものの、もし、熟睡していて気が付かず逃げ遅れていたらと思うと怖い。ホント皆んな無事で良かった。

出火元の住人は、何度も何度も謝っていた。謝ってもらっても悲しみや怒りは消えない。でも、大家さんがその住人に、「全て燃えてしまったけど、生きていればなんとでもなる」と言っていた。

そうだよ!
生きていればなんとでも
泣いていても仕方ないじゃん!

私は涙を拭いて、アパートの住人達と頑張ろうと励ましあった。

「大場さん、あなた行く所ある?」

「行くところ…」

あ…今夜私どこで寝るの
着替えは
会社の制服はどうすればいい

「私もねぇもう歳だし…」

大家さんは申し訳なさそうに話してくれる。
それは、この件の処理が済んだら、前々から話のあった九州の息子さんの所へ行くと言う。

「息子夫婦に世話になるにしてもお金は持ってないとね…火災保険もおりるだろうし、この土地も売って後はひ孫達の面倒みながら、ゆっくり余生を楽しむよ」

だからアパートを建て直す事はしないと言う。

そう言われてしまうと、私には何も言えない。

「そうですか…お元気で」

「あなたもね」





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