楕円の恋。
『じゃあ次女の子は誰から行く?』

大野先輩が笑顔で問いかける。

私達は顔を見合わせて、少しの沈黙の後、

『わ、私行きます!』

少し緊張した面持ちで、圭子ちゃんが手を上げて言った。

『よし!圭子ちゃん頑張れ〜』

大野先輩が優しくエールを送る。

見た感じ圭子ちゃんはやっぱり少し緊張している。

『圭子ちゃん〜いつも通りいつも通り〜』

私は圭子ちゃんもヤジった。

私のヤジを聞いて、圭子ちゃんは少し笑顔になった。

圭子ちゃんはゆっくりとしたボールを投げると、うまい具合にピンが7本倒れた。

『圭子ちゃん!上手い上手い!スペア狙えるよ!』

田中先輩が笑顔で声をかけた。

圭子ちゃんは緊張がほぐれたみたいで、二投目はスムーズに投げ、スペアを取った

『やった!やった!』

圭子ちゃんは元気に両手でハイタッチを求めてきた。

『ナイススペア』

片桐先輩と大野先輩は笑顔で圭子ちゃんとハイタッチする。

田中先輩は両手をグーにして圭子ちゃんを迎えた。

圭子ちゃんも両手をグーにしてコツンと合わせた。

サッカー部の誇るイケメン達とハイタッチできて圭子ちゃんはご満悦だった。

『じゃあ次あかりちゃん頑張れ。そん次涼ね』

田中先輩はサラッと言った。

『な、なんで私最後なんですか?』

『だって、最初と最後って投げるの緊張するじゃん。緊張したらあかりちゃんがかわいそうじゃん。』

田中先輩が笑顔で言ってくる。

あかりちゃんは苦笑いしている。

『涼は俺らの前とか緊張しないでしょ?ねっお願い』

田中先輩のイケメンスマイルで私はまるめこまれた。

『全然いいですよ〜。』

私は田中先輩に負けないくらいの笑顔で答えた。

『じゃああかりちゃん頑張れ!』

田中先輩が大きく手を振ってエールを送る。

それでもあかりちゃんはやっぱり緊張しているみたいだった。

あかりちゃんはゆっくり振りかぶってゆっくりボールを投げた。

コロコロとボールはゆっくりと転がり、ストンとガターに落ちた。

あかりちゃんは顔を真っ赤にしてこっちを振り返った。

『あかりちゃん!可愛い!ドンマイドンマイ!』

田中先輩が手を叩いてフォローする。

『あかりちゃんリラックスリラックスだよ』

大野先輩も優しくフォローした。

あかりちゃんはニコッと笑って二投目を投げた。

ゆっくりコロコロと転がったボールはやや右側を捉えて5本倒れた。

『あかりちゃんいいね〜』

田中先輩が一際大きな声をあげた。

片桐先輩も手を叩いて笑っていた。

『じゃあ最後はみなさんお待ちかねの涼!頑張れ』

田中先輩は笑顔で送り出してくれた。

私はレーンの前に立ち、ふーっと少し深呼吸をした。そしてゆっくり振りかぶって投げた。

私が投げたボールは一直線にガターへ落ちて行った。

『あはは。涼〜!かわいこぶるなよ〜!』

田中先輩が大笑いしながらテーブルをバンバン叩いてヤジってきた。

『かわいこぶってないし!』

田中先輩のあかりちゃんとの扱いの差に少しイラッとした。

『涼〜。ドンマイドンマイ。よーく狙って。はい深呼吸。』

大野先輩が優しく接してくれた。

片桐先輩は何も言わなかったが、笑顔だった。

私はまた深呼吸をし、ボールに田中先輩への怒りを少し込め投げた。

勢いよく投げられたボールは、先ほどとは逆のガターへ吸い込まれて行った。

『あははははは!涼!』

田中先輩はお腹を抱えて笑っていた。

『えぇーい!うるさーい!』

私は両手で田中先輩をポコポコ叩いた。

『田中。笑いすぎ。涼ドンマイ!気にすんな。』

片桐先輩は笑顔でポンと私の頭に手を置いて慰めてくれた。

ちょっと前の私だったら、絶対キュン死していたと思う。

1ゲーム目は田中先輩が225

片桐先輩が187

大野先輩が169

圭子ちゃんが105

私が89

あかりちゃんが72だった。
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