そのキスで、忘れさせて
「冗談じゃない」
あたしは彼を睨みながら反論する。
やっぱりこの人、アタマおかしいんだと思って。
ナンパ?いや、もしかしたら痴漢だったりして。
どっちにしても、付き合ってやろうかなんて上から目線の男、ごめんだ。
そう思ったけど……
なんだか自暴自棄になってきて。
どんな男でもいい、誠を忘れなきゃと思ってしまって。
「付き合ってあげようか」
男の言葉をそっくりそのまま返していた。
「上等だ」
男は低い声で笑った。