そのキスで、忘れさせて
やっぱりあたしには、家庭的な料理のセンスしかないらしい。
いつも買うような地味な食材を買って、遥希のマンションに戻る。
そして、何気なくエレベーターに乗った。
扉が閉まる直前、
「すみません」
一人の男性が滑り込んだ。
黒い短髪に、少し筋肉質で背が高い。
そして、何と両手にエコバッグを持っているのだ。
そのエコバッグには、たくさんの食材が入っている。
ネギやジャガイモから、カラフルなパプリカ、そして、見たこともないハーブのようなものまで。
一瞬でピンときた。
この人、料理が出来ると。