肉食御曹司に迫られて
「湊じゃない?」
湊は、ポケットから、携帯を出すと、登録のない番号に一瞬躊躇したように見えたが、
チラッと奈々を見た。
「どうぞ、出て。」
と言われ、電話に出た。
「もしもし。」
途端、顔色が変わったのが、奈々にも分かった。
そして、次の瞬間から、会話はフランス語に代わっていた。
奈々は、運ばれてきたパンケーキを黙って食べていた。

湊は、ほかの人には、会話は通じないだろうと、小声で話し続けていた。
「アミラ、なんでこの番号わかったんだ?」
「親父の差し金か・・・。」
「なんだって?そんなこと出来ない。」
「無理だ。アミラだってそんな結婚望まないだろ。」
「彼女に何を?」
そこで、湊が絶句した。
そこまでで、電話は終わった。

店の中は、若い女の子も多い。モデルのような男の人が、外国語で電話する姿を、ちらちら羨望の眼差しで見ていた。

湊は、しばらく黙ったままだった。

奈々は、今の会話を静かに聞いていた。
(- 湊。あなたは何を抱えているの?)
その会話の内容を、奈々はすごく大きな衝撃…ということもなく、なんとなく受け入れていた。
(ー 湊には、他に決められた人がいる…。)

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