肉食御曹司に迫られて
奈々は、重たい瞼を少し開いた。
白い、天井が見える。

「水澤?気が付いたか?」
少し、横を見ると藤堂マネージャーの姿が見えた。
「…ここは?」
掠れた声になったが、奈々は尋ねた。

「病院…。」
その声に慌てて体を起こそうとする。
「まだ、起き上がるな!」
ベットの横に座っていた、藤堂が立ち上がり、肩をそっと押し、起き上がるのを制止した。
「貧血と寝不足。そして疲労からくる風邪による発熱。」
藤堂は奈々に告げた。

奈々は腕に刺さった点滴を見つめた。
「あと、1時間ぐらいだそうだ。それが終わったら送って行く。」
藤堂は表情を変えず続けた。

「…本当にすみません。無理をするなって言われたのに…。」
奈々は、まだはっきりしない意識の中、辛うじて伝えた。
「…今はいい、もう少し安め。」
その声に、奈々は、瞼を閉じると、暗い闇に落ちていった。
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