肉食御曹司に迫られて
藤堂は、そんな奈々を見つめていた。
一筋流れた涙をそっと手で拭うと、
「…なんの涙だ…?」
と複雑な表情を浮かべ、また、椅子に腰を下ろした。

奈々は、寝不足もあったのか、次に目が覚めた時は、かなり意識がはっきりしていた。
「どうだ?起きられるか?」
藤堂に言われ、奈々は
「はい、かなり楽になりました。ホント、すみません。」

「フロントの水谷に事情を話して、荷物を持ってきて貰った。俺は外に出ているから、着替えろ。」
よく見ると、ドレスのままだった。
奈々は、頷くと私服に急いで着替えた。

ドアをあけて、椅子に座っていた藤堂の近くに歩み寄る。

「歩けるか?送って行く。」
藤堂は、奈々を促した。
< 81 / 191 >

この作品をシェア

pagetop