ドメスティック・ラブ

 まっちゃんが怪我したのに気付いた瞬間は驚いたけど、そして死ぬ程心配したけど。でもきっと、あの場面で介入せず放っておけるならそれはまっちゃんじゃない。それくらいは私にだって分かる。熱血という言葉はあまり似合わないけれど、教師になりたくてなったまっちゃんは生徒思いの良い先生だと思う。とりあえず重傷じゃなくて本当に良かった。

「あー……ごめん。パーッと気晴らしにドライブ行こうって連れ出しといて締めがこれだもんなあ」

 まっちゃんが額に巻いた痛々しい包帯に軽く指を触れて苦笑する。

「本当にね。濃い一日だったなー。色々有り過ぎてさとみんの事とか頭から吹っ飛んだわ」

 そういう意味では凹む私に気分転換をさせたかったであろうまっちゃんの目論見は成功したとも言えるのかもしれない。その分別の心労も背負ったけど。

「まあ怪我もあるしすぐにとは言えないけど、今日の分は退院してからちゃんと埋め合わせはするから。何がいいか考えといて」

 膝の上に横になったまま、首を捻ってまっちゃんの顔を見上げる。

「じゃあ今度はちゃんと宿取って温泉行こう。部屋に露天風呂付いててご飯も部屋で食べれるのがいいな」

 そう言うと少しだけまっちゃんは驚いた顔をした。
 怪我する直前、サービスエリアでこのまま泊まっていこうかという彼の提案に戸惑うばかりではっきりした答えを出せなかった私がこんな事を言い出すとは思っていなかったんだと思う。

「今度は別々じゃなくて、ちゃんと一緒に温泉入ろう。部屋からの景色綺麗で、もちろんご飯美味しい所ね」

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