ドメスティック・ラブ

 視線が重なる。でももう逸らさない。
 目を合わせたまま、まっちゃんが少しだけ目を細めた。

「……一緒に入るんだ?」

 探るような言葉。まっちゃんにしては、ちょっとズルいジャブ。

「……夫婦だからね」

 はっきりと言い切ってやる。
 結婚の誓いを交わしたにも関わらず、今も友達の延長線上にいて。甘い空気に慣れてなくて。未だに殆ど触れ合った事もなくて。そんな少し不自然な私達の関係。
 でも少なくともこれまで私はまっちゃんと結婚した事を後悔した事はない。

「まっちゃんが怪我したの見て、私も色々考えた。今回は軽い怪我だったけど、事故なんて偶発的な物だから、いつ何が起こるか分からなくて万が一って事もあるし。だからさ」

 ゆっくりと膝から顔を上げて目線を同じ高さに合わせる。布団の上に置いた手はそのまま。そんなはずはないのに、布団越しの体温を感じる様な気がした。

「好きだって聞かせてもらってもない内に、うっかり死なれたりしちゃ困るなって」

「…………」

 神妙な顔をして聞いていたまっちゃんの目が、私が最後に発した一言で丸くなる。
 一瞬の間の後、彼は大きく吹き出した。

「え、ちょっと。何で笑うの」

 夜なので必死に声を抑えようとしながら、けれど両手で腹部を押さえて涙目のまっちゃんが堪え切れずに笑い声を漏らす。布団の下の膝がピクピク動いているのが分かった。

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