ドメスティック・ラブ

「こーらこの酔っ払い」

「んー……涼介……」

 よっしーの手伝いで会場に残っていたはずの涼介がようやく店外に出て来ていた。彼は荷物をさっきまで私が座っていた植え込みの所に置くと、その上に拾ったジャケットを乗せてから私を抱え直し、もう一度ゆっくりと座らせる。きっちりミネラルウォーターのペットボトルが差し出される辺りがさすがだ。
 植え込みには当然背もたれはないので、上体のグラグラ揺れる私を支える為に涼介も隣に座って自分の肩に私の頭をもたれかけさせた。背中を腕でホールドされてるのも含めて安心感があって、私は飲んだペットボトルを返してから遠慮なく身体を預けて目を閉じる。

「だから一気に飲んだら回るぞって言っただろ。いつまで経っても酒の飲み方成長しないなー」

「だーって、スピーチ終わるまではと思ってたから、挙式も披露宴も全然飲んでなかったんだもん……」

「だからってシャンパン・ビール・ワインと最後二十分くらいで一気に流し込んだらこうなる事くらい分かるだろうが」

「カクテルも二杯くらい飲んだー。悔しいじゃん、飲み放題なのに全然飲んでないの」

「貧乏臭い発言やめなさい。俺が苦労させてるみたいじゃないか」

 痛くない拳でコツンと頭を小突かれる。
 酔ってると言っても身体に力が入らないだけで気分が悪い訳じゃないし、頭が痛かったりもしない。むしろ気分だけなら踊り出したいくらい高揚してる。

「だあーいじょーぶ。涼介がそんな甲斐性ないやつだなんて誰も思ってないって」

 えへへへへと締まらない笑い声を漏らすと、今度は指で額を弾かれた。

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