ドメスティック・ラブ
「……何だろう、酔い潰れたしまちゃんを介抱してるまっちゃんなんて十年前から見慣れてるはずなのに、言ってる事も今まで似たような会話何度も聞いた事あるのに、何か違う!」
「てか名前ー!お互い呼び捨てにしてるの初めて聞きましたよー!そう言えばまっちゃん先輩って涼介って言うんですよね……」
「密着度高いし、ラブラブオーラが出てるって事じゃないですか?やーホント前と違いますね!でも何か……しっくりくる。ちゃんと恋人同士っぽいというか……」
至近距離で一部始終を目撃した先輩と後輩達が興奮した様子で何やら言い合っている。素面で言われていたらいたたまれない気持ちになっていただろうけど、今はまだ酔っているお陰で聞き流す事が出来た。
名前に関しては、今日の挙式前に気づいた同期達に散々冷やかされたのでさすがにもう免疫がついている。そもそも反応してしまうのは私だけで、涼介なんて最初からからかわれても何処吹く風状態で気にもしてないし。
「そりゃあ俺達夫婦ですから」
彼女達の会話を聞き留めた涼介がニヤリと笑う。その答えに、よねみーと依ちゃんが再びキャーッと嬉しそうな歓声を上げた。
その様子にまっちゃんの学校の生徒達を思い出す。十歳以上違っても、こういう時のノリって変わらないものなんだなとぼんやり思ってみたりする。
「すみません、松岡家二人三次会参加するけど嫁が酔っ払って足元怪しいのでちょっと覚ましてから行きまーす」
涼介が三次会の出欠を確認している先輩に向かって声をかける。
「おー、しまちゃん大役果たして気が抜けたんか。てか来るって言ったからには二人でいちゃつきたいからってばっくれるの禁止な」
「ちょっと酔ってるけど潰れてないし、そんなんしませんー」
目を開けるのが億劫だったので顔を伏せたまま、ちゃんと聞こえてますよ、というアピールで私はひらひらと手を振る。