ドメスティック・ラブ
食事を終えて車を停めたコインパーキングまで歩いていると、雨上がりの夜風がアルコールで火照った頬に心地良かった。一杯しか飲んでいないので、この間のパーティーと違って今日は自分の脚で歩けている。
気分良くスキップでもしかねない私の斜め後ろを歩いているまっちゃんが、背後から声をかけた。
「転ぶなよー」
「そんなに飲んでないってば」
そう答えた途端に、ヒールがマンホールの穴に引っかかり、グラッと身体が傾いだ。
転ぶかも、より先に一瞬前の会話を思い出し、コントみたいなタイミングだなんて呑気に考えてしまう。
けれど私の身体はそれ以上傾く事はなく、支えられた右腕のせいで左手の指を軽く地面についただけだった。
「ほら言わんこっちゃない」
腕を掴んでギリギリの所で転ぶのを防いでくれたまっちゃんが呆れた様にため息をついた。
「……ありがと。でもこれはワインのせいじゃないから!」
断じて酔ったからふらついたんじゃない。単純にヒールが嵌っただけだ。
路面が濡れていたので膝をついたりしなくて済んだのは助かったけれど。
「はいはい」
私の言葉を受け流しながら、まっちゃんの左手が私の右手を掴み直した。
さっきまで半歩後ろを歩いていた彼は、今度は身体半分前に出て繋いだ手を軽く引く様にして歩き出す。
「……」