ドメスティック・ラブ
「確かに肉の味は多少薄まるけどパン粉しっかり入れたら段違いに柔らかくなるぞ。パン粉が肉汁吸うから肉汁が抜けてパサパサしなくなるし。まあこういう店のはつなぎに頼らずもっと上手く作ってあると思うけどな」
なるほど、知らなかった……。
「へえ……さすがまっちゃん。次はそうしてみる」
調理実習で作った事があるから作り方も頭に入っているつもりだったけれど、基本的な所が抜けてたらしい。まっちゃんは断言する所を見ると家で作った事あるんだろうなあ。
もし私が家事が得意なら恋愛感情抜きで結婚するメリットも分からなくはない。でも料理の腕はこの程度だし掃除洗濯だってせいぜい人並みだ。何でこの人私と結婚したんだろうと考えながら、向かい側に座るまっちゃんを見る。
身長は高い方だし、スタイルだって悪くない。目鼻立ちのくっきりしたタイプではないけれど流行りの塩顔。性格だって面倒見が良くて優しい。まあいわゆる草食男子かつ「良い人」過ぎてそのせいでフラれたりした事があるのは知ってるけれど、結婚相手としては悪くないと思うし学生時代だって後輩の女の子から結構人気はあったはずだ。その気になれば結婚を前提に付き合える彼女くらいいくらでも見つけられそうなのに。
ああでも私立校の教師だと移動も殆どないはずだし出会いがないのかな。たまに同期男子のフリーの面子で合コン行ってたのは知ってるんだけど。
「千晶?」
怪訝そうにまっちゃんがこちらを見ている。いつの間にか完全に手が止まっていたらしい。
誤魔化す様に笑って、私はハンバーグの最後の一欠片を口に放り込み、グラスに残っていたワインを飲み干した。