ドメスティック・ラブ
しばらくまっちゃんはそのままポンポンと頭を叩くだけだったし、私も時折鼻をすすり上げるだけで何も言わなかった。不思議な安心感に素直に身を委ねてみる。
「普段泣かない奴の涙ってのは結構来るな。ちょっと焦った」
私の呼吸が落ち着いて来た所で、まっちゃんがようやく口を開く。
「……人前で泣くの嫌いだし」
柄じゃない、というのももちろんあるけれど。泣くというのは自分の一番弱い部分を曝け出すようで、抵抗がある。
だから、今まっちゃんの前で涙を溢してしまったのは自分でも予想外だった。自分が思っている以上にさとみんの件がショックだったのもあるし、以前から少しずつ積もってきていた『皆に置いて行かれる』不安が爆発したのもきっとある。楽しい時間が永遠に続く訳じゃない。それは嫌になるほど分かっていたはずなのに。
ようやく上を向いて彼の顔を確認すると、苦笑いしながら目の下をぐいと親指で拭われた。
「無理に笑って取り繕うから余計に気が滅入るんだよ。さとみん本人に寂しいってもっとアピールしとけば良かったのに」
「……言える訳ないじゃん、あんなに幸せそうなのに」
今まで散々相談に乗ってもらったし、私の結婚の時も相手を知ると驚いていたけれど「まっちゃんなら安心して任せられる」と祝福してくれた。だからこそさとみんの結婚に水を差すような真似はしたくない。
「意地っ張り」
「いいの!別に一生の別れって訳じゃないんだから」