失礼男の攻略法

上昇するエレベーターの中で、なんだったんだろう、とさっきすれ違った失礼男を思う。

がんばって、って言ったよ。

私のこと、仕事のできないクズ扱いしてたくせに。

今日はたまたま機嫌がよかっただけ?

そう考えると、余計に失礼男が最低男に思える。いい大人が自分の機嫌次第で対応かわるってなんだよ。悪態をつきながらカードキーを取り出して、41F社長室の奥にあるエレベーターに乗り換える。

そして到着した52Fはいわゆる私の第二の実家だ。


「お兄ちゃん、いるの?」

意外なことに週末のこの時間に電気がついていて、びっくりしながらリビングに近づくとソファーに寝ころびながらタブレットをいじっている兄の姿が目に入る。

「あれ、休日出勤?」

一瞬こちらに目を向けてそう問いかける兄は、スウェットにTシャツに眼鏡という完全にオフモード。

「お兄ちゃん、今日は出掛けてないんだ」

たいてい付き合いとか、デートとかで週末外に出ている兄が家にいるなんて、なかなかないこと。だからこそ、こっちに泊まっちゃおうって思って来たのに。
< 64 / 225 >

この作品をシェア

pagetop