失礼男の攻略法
慌てて立ち上がって
「所長、先日はありがとうございました。私からお礼に伺わないといけないのに、申し訳ありません」
頭を下げていると
「いえいえ、こちらも無理にお願いしたものですから」
狸親父らしいニヤケ顔の所長が近づいてくる。そんな期待されても何もないよ、と心の中でツッコんでいると、予想外の言葉がかけられた。
「いやね、直樹が千秋先生のこと、えらく気に入ったらしくてね。今回の案件で帰国することも増えるから、また会ってやってはもらえんだろうか」
想定外すぎて上手く意味が飲み込めないでいると
「千秋先生は、どうだろう?直樹じゃ相手として年が離れすぎているかな」
直球をかぶせられてしまう。どう答えるのがベストだろうかと考えながら
「私もすごく楽しい時間を過ごさせていただきました」
所長と直樹さんの腹のうちが見えないので、まずはどうでもいいことから口に出してみる。