失礼男の攻略法

慌てて立ち上がって

「所長、先日はありがとうございました。私からお礼に伺わないといけないのに、申し訳ありません」

頭を下げていると

「いえいえ、こちらも無理にお願いしたものですから」

狸親父らしいニヤケ顔の所長が近づいてくる。そんな期待されても何もないよ、と心の中でツッコんでいると、予想外の言葉がかけられた。

「いやね、直樹が千秋先生のこと、えらく気に入ったらしくてね。今回の案件で帰国することも増えるから、また会ってやってはもらえんだろうか」

想定外すぎて上手く意味が飲み込めないでいると

「千秋先生は、どうだろう?直樹じゃ相手として年が離れすぎているかな」

直球をかぶせられてしまう。どう答えるのがベストだろうかと考えながら

「私もすごく楽しい時間を過ごさせていただきました」

所長と直樹さんの腹のうちが見えないので、まずはどうでもいいことから口に出してみる。
< 74 / 225 >

この作品をシェア

pagetop