10年愛してくれた君へ【続編】※おまけ更新中
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春兄が研修先から帰って来る前日の昼間、その日は静かだった私の携帯が突然鳴った。
メッセージアプリの通知音だ。
差出人の名前を見た途端鳥肌が立った。
【今日の夜時間ある?】
山下さんだ…
あれ以来山下さんがお店にやって来ることはなかった。連絡も同様だったから、久しぶりに接点を持つ。
【どうしてですか】
こうなったらとことん嫌いになって欲しいと思い、今までよりもそっけない文面にした。
【メシ行くぞ】
それでも山下さんが引き下がることはない。拒否しているのにどうしてここまで…逆に凄い。
【行きません】
【何で】
疲れるな〜と思いつつ、重たい指で返事を打つ。
【もうそういう誘いはやめてください。
何を言われてもご飯は行きませんから】
【じゃあ最後にする。
今日行ってくれれば今までよりかはしつこくしない】
決して私を諦めてくれるとは言ってくれない。正直というのか、何というのか。
【ストーカーなんですか】
【は?ストーカーとは違くね?
好きなやつメシに誘ってるだけじゃん】
どうしてこうして惜しげも無く"好き"と言えるのだろうか。"好き"の安売りだ。
【で、どうすんの】
しくこくなくなるのなら…と安易な気持ちでYESと言ってしまった。
私の地元の駅まで来てくれるらしい。山下さんとの食事をする場所を真剣に考えるのもおかしいしそのつもりも全くなかったので、駅近くの和食屋さんを指定した。
あぁ…気が重いな。
でも、この先のことを考えたら、今これを乗り越えた方が明らかに賢いやり方だ。
食事に行くだけだし、大したことない!!
夜になり、しゃんと襟を正して待ち合わせ場所へ向かった。