10年愛してくれた君へ【続編】※おまけ更新中
待ち合わせ場所には既に山下さんがいた。
向こうが気付く前に様子を伺う。特にいつもと変わらない彼。怖そうなオーラは相変わらずだ。
「…ど、どうも」
「…おう」
仮にも私を"好き"と言っているのに笑顔一つ見せない。本当に好きなの?私、もしかしたらとんでもない罠にハマっていて、実は何かの詐欺とかなんじゃ。
いや、それは考えすぎか。
「早く入るぞ。腹減った」
「あ、はい」
老舗の和食屋さんで、値段は少し高いけれど味は申し分ない。
全く知らないお店に山下さんと二人で入るのは気が引けるが、ここは何度か足を運んだことがあるから安心して入った。
「いらっしゃいませ〜。何名様ですか」
「あ、予約した山下です」
え!?予約!?
「山下様でいらっしゃいますね。個室でご予約を承っております。ご案内致します」
「え、ちょっ」
予約?個室?どうしてわざわざそんなことを…
急に不安が押し寄せる。ここなら安心できると思ったのに、どうして山下さんが主導権を握っているの!?
案内された個室に入る。当然ながら、壁と障子の引き戸に囲われており、密室状態だ。
「俺が払うから。遠慮しないで好きなもん頼め」
彼が一体何を考えているのか想像できなかった。無口で乱暴なのに無駄に積極的だし、私のホームのようなこの場所でしっかりと段取りをしてやって来る山下さん。
この後何か起こるのではないかと焦り始めた。
「…おい、聞いてんのかよ」
「え?あ、はい」
どうして私がこんなに怯えないといけないの?
好意を寄せられて、断っているのに諦めてくれなくて。脅しのように食事に誘われる始末だ。
もっと他にいい人がいるはずなのに、どうして私…